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The History of Trout Fliesザ・ヒストリー・オブ・トラウトフライズ 鱒毛鉤の思想史

7,040 円(税込)

本書は、古代ローマ帝国にまで遡ることのできるフライフィッシングの歴史を一冊にまとめたものです。そこに一貫するテーマは、鱒を狙うために創られた毛鉤の発展が、歴代の釣り人たちが唱える思想・哲学の変遷によって大きく突き動かされてきたという史実の論証です。

 素朴な模倣から始まった毛鉤は次第に写実性を高めてゆき、19世紀末のこと、ついには羽虫の雄雌の別や複眼の色まで巻き分けようとする「厳格なる模倣」の時代を迎えます。これが20世紀に入ると、「模倣とは何か」と問いなおす新たな思想家たちが輩出して、毛鉤をめぐる科学と芸術は絢爛たる展開をみせるのですが、果たして、彼らのたどり着いた先は前人未到の新境地であったのか、それとも「いつか来た道」の逆戻りでしかなかったのか……。

 本書のもうひとつの狙いは、歴史のなかで繰り返されてきたアングラーの人間ドラマをそのままに記録・再現することです。釣りの美学をめぐってときに争い、ときに協力しながら、歓びと苦しみの彼方に真実を追い求めた人々の織りなす群像劇に、筆者の胸は熱くたぎります。

 歴史書は今を映し出す鏡。本書を読み終えた方々に「さて、私はどう釣ろうか?」とご自問頂けるとすれば、筆者にとってこれほど嬉しいことはありません。

錦織 則政

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